自宅で温泉気分![知識編]温泉のプロに聞く入浴や温泉の効果、入浴時の注意点
生活
#健康#冬
はれ暮らし編集部2022.07.28
本格的な冬の始まりを迎え、体の「冷え」が気になる季節。コロナ禍は落ち着きつつあるけれど「まだ少し温泉に行きにくい」と思われている方も多いのではないでしょうか。
今回は、ニセコ町在住で北海道初にして唯一人の「温泉ソムリエ師範」でありセミナー講師などとして活躍するさとう努さん(愛称:トムさん)に、入浴や温泉が体によい理由や自宅で温泉気分を楽しむ方法などについて聞きました。第一弾ではまず温泉に関する知識的なことを紹介します。
温泉のプロに聞く自宅で温泉気分を楽しむ方法、入浴剤の選び方がわかる、「自宅で温泉気分![実践編]」はこちら!
そもそも温泉とは何ぞや?
どうもまいど! ニセコ町のトムです。
温泉の効果を語る前にまず、温泉とは何か。
少々硬い話になりますが、これは「温泉法」という法律により「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度または物質を有するもの」と定められています。温度の定義は「源泉の温度が25℃以上」。物質の定義は「19ある特定成分のうち1つ以上規定値に達しているもの」となります。
この中の、温度と物質の間にある「または」というのがポイントで、どちらかの定義を満たしていればOK。「冷たいのに温泉」「温かいだけ(温泉成分なし)の温泉」というのが存在することになるわけです。
入浴の健康効果とは?
温泉の効果を考える前に、まず「入浴」の効果について見てみましょう。家庭で水道水を沸かしたお湯に入るだけでこんな効果があると言われます。
ちなみに、シャワーでこれだけの効果を得ることはできないので要注意。「湯舟に浸かる」ことが大切なのであります。
1.温熱効果
体温が上がり、血管が広がることで血流がアップ。老廃物が流され、コリ、疲れが解消されます。さらに体の奥の「深部体温」が上がることで免疫が活性化し、ウイルスに負けにくい体になるとされています。
シャワーでは表面体温が上がっても、深部体温まではなかなか上がらないのでご注意を。
2.水圧効果
水圧(静水圧)で体が圧迫されると、体にポンプアップ作用が与えられます。
特に「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎが圧迫されることで古い血液が心臓に戻り、冷え、むくみの解消、疲労回復効果が期待できます。
ちなみに入浴中、浴槽のなかでウエスト周りを測ると普段より3~5㎝細くなっていることをご存知でしょうか。残念ながら、あくまでも「浴槽のなかにいる間だけ」ですが。
3.浮力効果
水のなかで体がフワッと浮く効果です。
体が軽く感じるだけでなく、実際に重力負荷が下がり普段体重を支えている筋肉・関節の負担が減ります。その結果、体の緊張が解け、リラックスや疲労回復の効果が生れます。
温泉の健康効果とは?
普通のお湯でもこれだけの効果があるのに加え、温泉に入浴すると、そこに「薬理効果」がプラスされます。薬理効果とはそれぞれの温泉成分の「薬効」によって生まれ、次のような効果が考えられます。
●塩化物泉
塩化ナトリウム(いわゆる「塩」)を含む温泉では、塩分が全身をコーティングし、保温・保湿効果が生じます。全身がポカポカし長時間湯冷めしにくいのが特徴です。
殺菌効果があり、切り傷などにも効果的です。
●二酸化炭素泉・硫黄泉など
二酸化炭素や硫化水素など「ガス」系の成分を含む温泉では、ガスが肌から血管に浸透。心臓に負担をかけることなく血管を広げ、血流を改善します。
●酸性泉
殺菌効果があり、皮膚炎、アトピーの改善が期待できます。
●炭酸水素塩泉
重曹(炭酸水素ナトリウム)を含む湯です。入るだけで汚れを落とし、美肌効果があります。
忘れちゃならない温泉の「転地効果」!
さらに、私が非常に重要だと感じているのが「転地効果」です。多くの温泉地は自然に恵まれた山や海のそばにあり、そこに出かけるだけで日常生活から解放されます。
旅行によって気分がリフレッシュでき、自律神経が整うのと同じ効果です。
転地効果が特に高いのは「標高300~800mの森林の多いところ」と言われますが、海の近くなど都会とは違う環境であれば効果は十分に高まります。
この転地効果は旅行中だけでなく、「旅行に行こう!」と考えワクワクした気持ちになった時からスタートすると言われます。
(したがって、次の記事でお話をする予定の「自宅で温泉気分を楽しむ方法」にチャレンジするのも、入浴による効果を高めるにはとても有効なはずです)
寒い冬は特に要注意。安全に入浴を楽しむために気をつけるべき6箇条
このように温泉そして入浴は、体と心を元気にしてくれるものですが、実はその一方で年間1万9000人もの人が入浴中に亡くなっています。これは交通事故で亡くなる方の約6倍にもあたる数字です。
なかでも最も気をつけなければいけないのがヒートショック。特に冬場、リビングの暖かさと脱衣所・浴室の寒さ、湯の熱さなどの影響で血圧が急激に変化し、脳梗塞や心筋梗塞、失神、不整脈などを引き起こすものです。転倒や浴槽でおぼれる事態につながることもあります。
ヒートショックを防ぐため、入浴時には次の注意点を守るようにしてください。
1.脱衣所・浴室内をあらかじめ温める。
脱衣所にストーブを置く、浴室内の壁・床に熱いシャワーをかけるなどして、脱衣所と浴室内の温度を上げておきましょう。
2.お湯の温度は低めに。
高齢になると皮膚感覚が鈍り、熱い湯を好みがち。熱い湯は交感神経を刺激し、血圧を上げるため、好ましくありません。冬は40℃、夏は38℃程度の湯にゆっくり浸かるのがおすすめです。
3.浴槽に入る前に掛け湯は必須。
掛け湯には、体についた汚れを流して清潔にするだけでなく、温泉成分や温度に体を慣らす意味もあります。温泉の場合は浴槽の湯をくんで掛け湯をするのがベター。家庭ではシャワーでOKですが、足先(心臓に遠い部位)から始め、体がしっかり温まるまで湯をかけてしっかりと血管を広げてから浴槽に入りましょう。
4.浴槽への出入りはゆっくり動作で。
浴槽に入る時も、いきなり「ドボン!」は禁物。血圧が一気に上がる原因になります。出る時にも急に立ち上がるのは立ちくらみの原因となります。入る時も出る時も基本はゆっくり動作を心がけましょう。
5.入浴後、入浴前にも水分補給!
「入浴後の水分補給」はだいぶ浸透していますが、それだけでは入浴中の体の水分不足に対応ができません。入浴の15分前までに、コップ1杯程度の水を飲み体に水分を補給しておきましょう。水以外に、スポーツドリンクやお茶でもOKです。
6.一気に長湯は禁物。途中に「休憩」をはさもう。
一気に長時間浴槽に浸かるより、インターバルをはさむことで体に負担をかけずに深部体温をあげることができます。
おすすめのパターンは42℃くらいのあつ湯なら「浴槽3分→休憩→浴槽3分→休憩→浴槽3分」。38℃~40℃程度のぬるい湯なら「浴槽5分→休憩→浴槽8分→休憩→浴槽3分」となります。体や頭を洗う時間は、休憩とみなしてOKです。
浴槽に使っている間、頭に冷たいぬれタオルをのせると立ちくらみを防げるうえ、温泉気分も盛り上がりますよ。
次回の記事では、自宅で温泉気分を楽しむ方法、入浴剤の選び方などについてお話をしていきます。
さとう努さん
温泉ソムリエ協会認定の温泉ソムリエ師範。他にニセコ温泉部部長。ニセコ観光圏「観光温泉大使」など、温泉および入浴に関する資格と肩書は10以上。カレーやど「アワグラス」代表(現在は休業中)。愛称は「トムさん」。東京都出身で、現在はニセコ町在住。北海道初にして唯一人の温泉ソムリエ師範として、道内各地で温泉ソムリエ認定セミナーを開催する。持ち前のユニークなキャラクターを武器にメディアでも活躍中。
- 記事を書いた人
- はれ暮らし編集部 ジョンソンホームズ
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